r e p l a y





 
 どろりと汚い自分の血液が、目の前を流れる  赤く染まった視界には二つの人影が  あと三分と経たずに殺されるのは明白だった  抵抗する気はない  もう疲れた。ひどく疲れてしまった  何も考えずに、眠りたいんだ  もう、いいだろう?  不意に思い出す彼の笑顔  こんな状況になって初めて  あの時君に「愛している」と言わなかったことを私が後悔していると知ったら  彼は呆れるだろうか replay  愛した人が、いた  今ではもう懐かしい日々  何も訊かずに、不安を理解してくれ、抱きしめてくれる人がいた  何の機会だったか、北国生まれの私が、まだ桜並木を見たことがないと話すと  彼は驚いた顔をして、自分の街の春を話してくれた  そして、いつか一緒に見よう、と  嬉しかったけれど、約束の出来ない私は曖昧に頷いただけだったと思う  そして私は君の手を離してしまった  彼を幸せにする自信がなくて  自分が幸せになれる自信がなくて、私は彼から逃げた    水音が遠くで鳴っている  外は雨なのだろう  男達は小声で何か話していた。異国の耳慣れない言葉  不思議と体は軽く、痛みはなくなりつつあった  もしも君になにか伝えられることがあったなら  私は謝罪と感謝と、あの日言えなかった言葉を君に言おう  もしもあの日々に戻れるのなら  汚れた両腕で彼を力一杯抱きしめてあげよう  それだけでよかったのだ  それだけで私は幸せだったのに  そして多分君も  耳慣れた金属音が斜め上で軽く鳴った  君の街に私は風となって行けるだろうか  太陽が溢れる、優しい君の街に  君は今でもあの頃のように笑い、人を助けているのだろうか  私が遠い昔に無くしてしまった、暖かい家を持っているのだろうか  そうだとしたら、私はとても嬉しい  君に気づかれなくともいいのだ  ただ今、君に会いたい  君の笑顔に会いたい  男の人差し指がゆっくりと引き金を……。  end. next→again