a g a i n





     どうしていつも、失いたくないものほど  again    「いつか、一緒に見たいな」  「君の故郷で?」  「いいトコだぜ」  「そうだろうな…」  君が育った街だから、そう言ってアイツは笑った。  アイツが死んだと聞いた時、真っ先に浮かんだ顔が  なぜかその時の笑顔だった。  その知らせが届いた日から風は格段に暖かさを増し、  桜は、見る人もいないというのに満開に咲き誇った。  独り、煙草をふかしながらそれを見る。  否、きっとずっと独りなのだ。  来年も、再来年も、永遠に、君が隣で桜を見てくれることはないのだから。    今更ながらに、細い手を離してしまったことを悔やんだ。  君が俺を必要としてくれていることは分かっていたのに。  だから君に惹かれたし、時が経つ程に愛しさが増したのだから。    言葉にすれば、君は自惚れだと笑ったかもしれないが。  暖かい春の風が体を吹き抜ける。  君を少しでもはっきりと思い出したくて、瞼を閉じた。  桜の花びらの残像を透かして、君が現れる。  でも、君が俺を必要としていたように、俺にも君が必要だったのに。  きっと君はそれに気づいていなかったのだろう。  どうして、言ってあげられなかったんだろう。  たった一言。  言えば何かが変わっていたのだろうか。  言えば君は今、隣で笑っていてくれただろうか。  今となってはもう、確かめる術も……。  咄嗟に目を開けた。  どうしてその時振り返ったのか。  そんなはずがないのに、あるわけないのに、  君が後ろで、笑っている気が、した。  振り向いた視線は何も捉えられずに、青い空に舞う薄紅の花を追うばかりだった。  でも、俺は笑う。  今にも泣いてしまいそうだったから、歪んでいたかもしれないが、君に笑った。  君の気配を感じた。  あの頃と変わらない、俺を幸せにする気配。  そうか、会いに来てくれたのか。  ふわりと優しい風が、俺の頬に触れた。  end.