指先を君の頬に伸ばす。 君は眩しそうに目を細めた。 浅 き 夢 み し 「また痩せた・・・」 左手を回した肩の細さに思わず嘆息する。 「そうか?」 クラピカは空とぼける。 それとも、本当に気づいていないのだろうか。 あり得ないことではない。 「仕事、きついのか」 「・・・・・・」 「辞めちまえ」 沈黙を肯定と取ってそう言うと、我が侭を言う子供を諭す様に笑った。 その笑顔が儚くて、怖くなる。 回した腕に力を込めた。 初めて会った時、コイツは一点の曇りもなく、光の中で背筋を伸ばして立っていた。 ずっと、そんな風に生きていくヤツだと思っていた、のに。 今はこんなにも危うい。 それでも一秒だって誇りを失うことがないから、 俺はいつも君を引き止められないんだ。 その強い瞳に、何も言えなくなってしまう。 まだ冷たさの残る春の風が、暖房で暖められた空気に侵入してくる。 曖昧な温度が、曖昧な俺達を包んで、俺は泣きたくなる。 君のために。 ふと気がつくと、クラピカの大きな目が開いていた。 どうした、と呼びかけても目の焦点すら合わさない。 ただ、細い吐息のような声が唇から漏れた。 「生まれ変わるなら、花になりたい」 「花、」 「そうして、お前に育てて貰うんだ」 その言葉にどんな反応をすればいいのか、判断がつかなかった。 不吉な言葉の様な気がした。 本当に、次にコイツと会うのは来世になってしまうのではないかと、そんな疑心が胸を駆けめぐる。 「・・・俺は、やだよ」 「どうして?君なら賛成してくれると思ったのに」 「人間と花じゃ、恋はできないから」 本当の理由は違ったが、俺はそう返した。 「できるよ」 そんな俺に、まるで常識だと言わんばかりに君は即答する。 「私はお前に恋い焦がれる。君も私を想ってくれる。 君が私の花びらに口付けてくれれば、私は君の唇を露で濡らそう。 なぁ、レオリオ」 クラピカは笑いながら、俺の頬に掌で触れた。 「愛する君の腕の中で一生を、片時も離れずに過ごすのはどんなに幸せだろう」 堪らなくなって、俺はクラピカの体を抱きすくめる。 強く、強く、抱きしめた。 そうしなければ、今すぐにでも失ってしまうのではないかと思った。 君が今にも消えてしまいそうな気がした。 クラピカの肩に顔を埋めた俺の頭の中に、ある情景が浮かぶ。 日の溢れる室内庭園に一人の青年が立っている。 その腕の中には先刻咲いたばかりの美しい花。 青年はその純白の花びらにそっと唇を落とすのだ。 end.