午前中に干した洗濯物が飛んでしまうくらい風の強い日だった。  クラピカは地面に落ちて汚れてしまった衣服を見て、少し不機嫌だった。  レオリオは苦笑してクラピカを散歩に誘った。  クラピカは強風だから目にゴミが入ったり、髪がボサボサになる、と  最初は拒んだ。  それにめげずレオリオは粘り、遂にクラピカが折れた。  ゴウンゴウン、と音を立てて洗濯機が回っている。  外は晴れていた。  よく晴れた春の日    風が吹いた。  金色でクラピカの眼前が覆い尽くされる。  溜息をつく。  レオリオは笑う。  笑って、髪をもう少し短くしたらどうだと自分で言っておきながら、  少し考えて、やっぱりお前にはその長さが似合ってると  クラピカの髪をかき上げてやった。  クラピカの中には反抗心が芽生え、  一瞬本当に髪を切ってやろうか、と思ったが  そんな決意は出来ないと自分で分かっていた。  レオリオは何故かはしゃいでいて、  コンビニでアイスを買おうと言い出した。  気温は、確かに暖かい。  少し厚着のクラピカは汗ばむくらいだ。  なので、クラピカは頷いた。  レオリオは新発売の杏仁豆腐味のアイスを、  クラピカはバニラのカップを選んだ。  それをスプーンでちまちますくいながら、二人は歩いた。  春の気温はアイスを溶かさない。  レオリオが向かった先は公園だった。  そういえば桜の時季だとクラピカは思い出した。  ピンクの花が青空によく映えている。  クラピカは、夏の向日葵よりも、春の桜の方が青空に似合うと思っている。  夕立の向日葵というのもオツなものだが、桜は青空でなければ駄目だ。  桜を見上げながらアイスを食べる。  レオリオが唐突に言った。  少しは新しいものに挑戦しろよなー。  そして問答無用でクラピカの口に自分のスプーンを押し込んだ。    そう言われてクラピカは気づいたが、  確かにアイスといえばバニラという公式が自分の中で確立していたかもしれない。  この前にレオリオとアイスを食べたのは夏だったから、  その時からずっと覚えていたのだろうか。  クラピカは思わず笑った。  なんだよ、と不満そうなレオリオの声。  杏仁豆腐の優しい味。  風が吹いた。  桜の木々を揺らし、花びらを散らす。  あ、と思う暇もなく、  二人のアイスの上にも何枚か舞い降りた。  顔を見合わせて、笑う。  たまにはこんな誕生日もいいだろう?  クラピカは一瞬言葉が理解できず、は?と聞き返した。  誕生日オメデトウっつーことだよ。  レオリオの掌がぐしゃぐしゃとクラピカの頭を撫でる。  そしてやっとクラピカは今日が自分の誕生日だということに思い当たった。  よかったよ、お前の不機嫌がなおって。  レオリオは微笑んで、散歩に誘った理由を明らかにした。  なんだか子供扱いされたような気がして、  クラピカは一瞬ムッときたが、  桜が綺麗だったので、それに免じて許してやることにした。  それとも、レオリオがくれた普通の幸せが嬉しかったからだろうか。  とりあえず今日一日くらいは笑顔でいようと、  心に決めたクラピカだった。 end.