028-辞世の句  僕はね、サム。  きっとあの人が聞いたら怒るだろうけど、  この命と引きかえに彼が幸せになれるんだったら、それでもいいと思うんだ。  だって僕はあの人がいたからここまで来たんだ。  あの人の為に生きてきたようなものなんだよ。  僕がそう言ったら君は多分  「そんな悲しいことおっしゃらないでください」  って眉根を寄せるんだろうね。  どこが悲しいのか僕には分からないけど。    だって愛する貴方の為に死ねるだなんて僕にはとても幸せなことに思える。  足元でたぎる紅蓮の炎が求めているのは、指輪と、僕のからだ。  どちらか一つでも欠けていれば、きっと次はそのカイナで貴方を求める。  溢るる涙は誰に捧げたものだったのか。  この空の下の何処かにいる貴方に全てを託して、僕は逝くから。  僕が戻らなくても悲しまないで。  貴方に愛してもらったままで、貴方を愛したままで僕は逝けるのだから。  どうか泣いたりしないで。  貴方の為に僕はここにいるのだから。  価値のある死を。フロドは微笑む。  意味のある死を。視界を遮断して何も見ない様にした。  溢るる涙は誰に捧げたものだったのか。  end.