020-大雪 自室の扉を開けてクロロは溜息を一つついた。 窓際に位置するベッドの上、白いシーツに桃色の髪が散らばっていた。 彼女の部屋はここではない。 いや、正確には彼女にこの家に住む権利を与えた覚えもない。 出てけ、と言ったことも同様になかったが。 「お嬢さん」 そう声をかけてみたが彼女は動かなかった。 床に腰掛けてベッドに背を預ける。煙草に火をつけた。 「部屋なら他にあるでしょ。出てきなさい」 ネオンは低くうめいた。(どうやら寝ていたわけではないようだ) 「やぁよ、あそこの部屋寒いんだもん」 「俺にストーブを買ってこいと?それにこの部屋にも暖房器具はないけど?」 俺は振り返ってネオンが身を起こすのを見た。 呆れた、寒いというならもっと着ればいいのに。 ノースリーブって言うんだっけ?白い肩と腕が露出した赤いワンピース。 「そういう問題じゃないわ」 魅惑的な衣装とは対象に子供のようなすねた口調。 彼女が口を閉じてれば襲うかな、と自己分析をしてみた。 答えは今のところ不定だ。 「じゃあどういう問題かな?」 煙を吐き出すと彼女が微かに眉をひそめる。 いつもは煙草を嫌がらないのに珍しい。 「音がしないんだもの」 音がしないことと寒いことは俺の中で繋がらない。 しかしこれが彼女の話し方なのだと最近慣れてきたので黙っている。 「音がしなくて、寒くて、誰もいなくて、まるで雪に閉じこめられたみたい」 「雪は嫌い?」 「クロロさん、私、子供じゃあないのよ」 雪が好きなのは子供とは、なんと短絡的な考え方だろうと思ったが そこは敢えて口にはしなかった。 「雪は嫌いよ。雪の中に一人でいるとすごく惨めったらしい気持ちになるの。分かる?」 「さぁ?」 俺は桃色の髪を一掴み指に絡ませる。彼女が少し俺に頭を寄せた。 「煙草も嫌い」 「どうして?」 「キスしたいときに邪魔だもの。意表を突けないじゃない?」 俺は笑って 「それは失礼を、お嬢様」 近くの灰皿に煙草を投げ入れた。 ネオンの冷たい腕が首に回る。 もし今大雪が降ってきて部屋の中に二人で閉じこめられても、 うん、一日ぐらいなら退屈しないかな。 end.