019-寒雷 外では寒風が吹き荒れ、人は足早に家路を辿る。 テレビではそろそろ年末の特番が始まる季節。 ルキアは炬燵にもぐり込んだまま身じろぎ一つしなかった。 時々本当に生きているのか一護が危ぶんだほどだ。 視線の先にはハイテクのカタマリとも言える液晶テレビ。 勿論一護の私物ではない。 テレビに興味津々らしいルキアにせがまれ、友人の小島水色から三日間借りたのだった。 千円という出血大サービス価格で。(本人談) テレビの中ではやけに顔色の悪い男と零れんばかりに大きな目をした女が喋っている。 こう言えばラブストーリィの様だが実際はホラー映画らしい。 そういえばコイツが前読んでいた本も、ホラーだった。 しかし怖さから言えば漫画の方が格段に上だろう。 一護はルキアがまくし立てたあらすじしか聞いていなかったが、 拙い説明でも物凄いストーリーだと言うことは理解出来た。 小さな画面の中ではそれでも結構凄惨な場面が展開されていた。 主人公の男が変な器具を付けて死体を調べているのだ。 ルキアが唾を飲む。 前に置いてあるマグカップの中身はもうぬるくなっているだろう。 一護の部屋には暖房器具は炬燵しかないので空気は外気温とさして変わらない。 中身は甘酒だった。 この季節になると黒崎家では必ず飲まれる。 酒かすから作り、砂糖は各自の好みで入れるので一護でも飲めた。 が、勿論二人分注いでこれるわけでもないので、ルキアの前にしかカップはない。 砂糖は遊子が入れるのと同じくらい溶けている。 テレビの中では雷が鳴っている。 ストーリィに入り込めない一護には、テレビの中と自分のいる現実の落差に驚く。 すっかり嵌っているルキアは、寒い寒いと言いながら炬燵に入り、 雷の音を聞いている不自然さに気付いていない。 まぁもともとコイツ自身が不自然さの固まりだからなァと一護は思う。 北風はがたがたと窓ガラスを揺らす。 テレビの中では例の女が悲鳴を上げている。 雷鳴が轟く。 犬が鳴いたのは、こっち(現実)だろうか、あっち(テレビ)だろうか。 無性に眠くなってきたので、一護は顎を炬燵の上に乗せた。 死神代理をやっていて、家族に隠して自分の部屋に女を住ませている自分が一番不自然か。 眠りに落ちる瞬間そんなことが脳裏を掠め、夢見が悪くなりそうだと内心でごちった。 end.