018-小春日和
試合の帰り道、三上と笠井は公園に寄り道をして、
ベンチに座りハンバーガーショップの袋を開けた。
冬独特の乾燥した空気が汗をかいた肌を刺激する。
笠井は晴れ渡った青空を仰ぎながら、チーズバーガーを食べ、
それを飲み下しきれないままコーラを口に含んだ。
ハンバーガーとコーラが口の中で溶け合って、体には悪そうな流動食を生み出す。
俺とこの人の関係もこんなもんかな。
不健康で、現代的で、安っぽくて。
「・・・先輩は、ハンバーガーかな・・・」
「・・・は?」
笠井がいきなり意味不明な言葉を発したので、
三上は思わずハンバーガーの包みを開く手を止める。
「いえ、こっちの話ですから」
笠井はそう言うとまるで何事もなかったように、チーズバーガーを食べるのに専念しはじめた。
いくら笠井の中のみで行われた会話とはいえ、気になるものは気になる。
特にあんなどう考えても解析不能な言葉を聞いてしまった後では。
三上は自らの手に持たれたテリヤキバーガーに視線を落とす。
つまり、先程の笠井の言葉を簡略化するとこうなのだ。
三上は何とか冷静にその問題を解こうとしていた。
三上亮=ハンバーガー
わっけわかんねぇ・・・・・・。
三上は頭を抱えた。
「先輩、どうかしましたか」
笠井はその異様な光景に内心首をかしげる。
「・・・笠井」
三上は腕の間から顔を出した。
「はい」
「俺は・・・・・・テリヤキか?チーズか?」
それが、自身が先ほど言ったことを指しているのだと気づくのに
笠井はきっかり3秒を用いた。
「えーと、どっちかって言ったらですけど」
「うん」
「テリヤキ、ですかね」
三上はたっぷり5秒沈黙した。
二人の間に穏やかな日射しが降り注ぐ。
どこかの枯れ木に止まった小鳥が軽やかに鳴いた。
「・・・カロリー高いほうだな」
「あんまりかわりませんよ」
笠井から無駄なフォローがくりだされる。
「・・・そうか」
「そうですよ」
三上は無表情で空を仰ぐ。
頭の中で津波のように襲い来る疑問に答えを見つけ出すべく、
必死で思考を巡らしていたのだ。
「・・・お前は、」
「はい」
「チーズバーガーか?」
「いえ、俺はコーラです」
きっぱりと、それが世界共通の常識だとでも言わんばかりに笠井は断言した。
三上の思考は追いつけずに、完全なフリーズ状態へと陥る。
システムダウン。残る方法は強制終了のみ。
「・・・そうか」
「はい。先輩、テリヤキ食べないんですか?」
笠井は食べ終わったハンバーガーの包みを几帳面に折りたたみながら訊ねる。
視線を移すと、三上のテリヤキバーガーは一口も食べてもらえないまま冷え切っていた。
「今日あったかいですねー」
笠井はそう言いながらマフラーをはずす。
「・・・そうだな」
青く透き通った空を見上げながら三上はぎこちなくハンバーガーを食べた。
end.